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2004.01.24

■■□「ヨーグルト」

 仕事でミスをした。
 私は、会社からの帰り道、自分の失敗を何度も思い起こしていた。自己嫌悪が何度もリピートされる。
 やがて、携帯電話が鳴った。家にいる妻からだ。
「もしもし・・・、うん、牛乳ね・・・、分かった」
 牛乳を買ってきてくれという連絡だった。
 私は、自宅のそばにあるコンビニに寄り、1リットル入りの牛乳を買った。
 家に着いた。玄関を開け、中に入る。
 そして、コンビニの袋を食卓に置き、背広を脱いだ。
「おーい、帰ったよ」
 しかし、返事はない。
 私は牛乳パックを手に取り、妻のいる場所へ向かった。納戸として使っている狭い部屋だ。
 部屋の扉を開け、中に入った。
「ただいま」
 私が言うと、どこからか、ボコボコという音が聞こえてきた。
 部屋の中には、大きなポリバケツが目立つように置いてあった。この中に妻が入っているのだ。
 ボコボコという音は、このポリバケツの中から聞こえてきた。今の音は「おかえりなさい」だった。
「牛乳買ってきたよ」
 また、ボコボコという音がした。今度は「ありがとう」だ。
 ポリバケツの蓋を開けた。しかし、妻は見えない。なぜなら、上の方までなみなみとヨーグルトが入っているからだ。
 次に、私は牛乳パックの口を開け、中身を全部をバケツの中へ注ぎ込んだ。
 表面にゴボゴボと泡が浮かび上がる。妻が喜んでいるのだ。
 牛乳を入れ終わった後も、しばらくの間、私はヨーグルトの表面を眺めていた。
 すると、仕事で荒んでいた気持ちがだんだんと和んできた。
 そして、いつしか私の心の中は、妻への愛情で溢れ、幸福感に包まれるのだ。

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Comments

コメントありがとうございました。

不条理と書かれておられますが、『異形コレクション』というアンソロジーに出てくる掌編といった雰囲気で、
毎回、面白く小説を拝読させて頂いています。
小説の紹介は楽しんで行っていることですので、こちらこそ何だか恐縮^^;。
これからも楽しみにしていますm(__)m

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