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2004.01.11

■□□「眼球」

 僕と彼女は恋人同士だった。
 だから、僕らは、愛の証しとして、お互いの眼球を交換したんだ。
 この意味、分かるかな。
 つまりね、僕の片方の目を彼女にあげて、彼女のを僕が貰ったんだ。
 だから、僕には彼女の見ている光景が見えたし、その逆に、彼女も僕の見ている光景を見ることができたんだ。
 でもね、その彼女はもういないんだ。
 うん、死んじゃったんだ。
 でも大丈夫。もう吹っ切れたから。そりゃ、しばらくは大変だったよ。クスリの世話にもなったしね。
 それはいいとして、実は、彼女は殺されたんだ。
 ある日、僕たちはデートした後、それぞれ家に帰ったんだ。
 僕の方が先に家に着いたから、僕は自宅でぼんやりしながら、彼女の目に映る光景を見ていたんだ。
 彼女はまだ帰りの途中で、ちょうど夕暮れの公園の中を歩いていた。そこは、彼女の家のそばにある公園で、抜け道ルートなんだ。
 黄昏時でさ、街路灯も壊れてたみたいで、随分薄暗かった。
 だから、ちょっと心配になったよ。
 黄昏って、一番ヤバい時間でしょ。逢魔が時って言うくらいだからね。
 そしたら、案の定というかさ、何だか怪しい奴が前の方のベンチに座ってるんだ。多分、彼女も気付いたはずだけど、彼女ってちょっと強気な女の子でさ、当然のようにそのままズンズン歩いて行くんだ。
 そしたらさ、彼女がそのベンチの横をかすめようとしたとき、そいつは立ち上がった。
 もう、あっと言う間だったよ。
 奴はでかいナイフを振りかざして、彼女に襲いかかってきたんだ。
 もちろん、慌てて逃げたよ。
 でも、彼女、ヒールの高い靴を履いてたから、走ってる途中で転んじゃったんだ。
 ガーンって感じで、地面が見えてさ、視界がガクンガクン揺れるんだ。多分、そいつがナイフを突き立てたんだ。
 そりゃあ、僕だって慌てたさ。すぐに洗面所に行って、鏡を見たよ。彼女に僕の姿を見せて、がんばれって伝えようとしたんだ。
 でも、結局ダメだったよ。
 彼女はしばらく抵抗したんだけど、そのまま動かなくなった。横向きのまま、静止画像になっちゃったんだ。地面にじわじわ血が広がっていくのが見えたよ。
 でね、ここからが不思議なんだけど、彼女が死んだ後も、見えるんだよ。
 何がって、彼女が見ている風景がさ。火葬されちゃったから、身体だってもうないのに、それでも見えるんだよ。
 もちろん、今でもね。

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